「火の鳥 エデンの花」感想

STUDIO 4℃が望郷編をどう描き直すのか結構期待してたんだけど、微妙な作品だった。

 

尺の都合もあり映画向けにいろいろカットされたりアレンジされているのだけど、最大の相違点はやはりインセスト・タブーに関するくだりがばっさりカットされたところにある。

そのために物語前半にあった狂気性が綺麗に漂白されていて、果たしてこれを「火の鳥」と呼べたものか。

というのも望郷編の近親姦に限らず火の鳥では様々な形で狂気性が描かれるわけだけど、じゃあその狂気の源泉は何かというと、そうまでしてでも生き抜こうとする、繁栄しようとする本能なわけで。

そうした人間の姿を描くことが火の鳥の一貫したテーマと言え、泥臭く生き抜こうとする人間を描かずして「火の鳥」だったと言えるんだろうかと。

 

一方で微妙に感じたのは普物語としてもあまり面白く感じられなかったからなんだけど、それは筋を知ってるからだけではなく、そういう頭のおかしさやキャラクターの泥臭さが洗い流されてしまったのも大きな理由だろう。

ロミの地球への郷愁や帰郷がメインテーマとなって、現代に通じそうな環境破壊や戦争紛争といったテーマをピックアップして再構成するってだけではやはり違ったのではないか。

終盤で判明するロミが素体として育てられていた事実であったりチヒロと関わりがあったりといったオリジナル設定も活かされてなくて、単純に構成がまずい作品だったようにも思う。

 

SF部分を現代の知見から描き直すという点では興味深い作品ではあったんだけど。