クー!キン・ザ・ザ

実写版から20年越しのリメイク、しかもアニメに媒体を移してキンザザの世界をどう描き直すんだろう、そんなことを期待して見に行ったんだけど、正直イマイチで実写版の魅力が損なわれてしまった感じだった。

惑星の環境、プリュク人の姿、様々なツールやテクノロジー。当時の技術や予算では表現しきれなかったであろうイメージをもっと精細な形で共有できたという点では興味深いものがあった。

ただ同時に、アニメになって具体性を持つことで説得力が強まってしまい、実写と比べるとシュールさやインパクトに欠けてしまってもいた。

実写の画作りというのは「あり得ないけどあり得そう」というギリギリのバランスの上に成り立っていたからシュールさと説得力を兼ね備えていたと思うのだけど、それが緻密さを増したことで、更にアニメというメディアの性質も相まって違和感が薄れてしまい、実写での笑いどころがそうでなくなってしまった部分は少なくないのかなと。

また一新された主人公コンビにもあまり魅力が感じられなかった。

実写では「おじさん」のヒロイックな姿や「ヴァイオリン弾き」の抜けた感じが魅力だったのだけど、アニメではどちらかというと二人ともトゲトゲしく、関係性もドライな感じになってしまっていた。

リアルになったとも言えるのだけど、キャラクタというのはやっぱり大きなところだった。

面白さどうこうは措いといても、実写版では「おじさん」の利他性が強調されていたように見えたのに、なぜアニメ版ではそういうキャラクターはいなくなったのか。また若いトリュクの方が主導的になっていたり、アルファ・ケンタウリに行くシーケンスがカットされてたりと様々な改変にどんな意図があったのか。

そしてそうした疑問の根っこには曲がりなりにも民主化を果たしたロシアでなぜ本作をリメイクしたのかというものがあったのだけど、作品を見ただけではハッキリとはわからなかった。

というわけで、その辺の答えを探して監督インタビューを読んでみた。

eiga.com意外にもオファーはアメリカからだったらしいのだけど、双方社会状況は本質的には変化してないという認識で一致しているらしい。

実際今は経済格差という形で階級化がいっそう進んでるわけで、それはその通りだなと思う。

ただ、細かい改変に対して全て答えているわけではないので、その他の点についてはなんとも言えないところ。階級化を出発点に読み解いていくことはできそうだけども。

まあロシアの言論状況を考えると体制批判のような突っ込んだことはなかなか言えないだろうしなあ……。