不思議惑星キン・ザ・ザ

『クー!キン・ザ・ザ』の公開と同時に実写版の本作もリバイバル上映されるとのことで、どうせならと先に実写版の方を見てきた。

ソ連のことは全くよく知らないのだけど、共産主義体制における形式や階級差別への痛烈な皮肉が込められていることは読み取れて、その表現方法が非常にシュールかつユーモラスで変な味のある作品だった。

ナンセンスともまた違うとは思うのだけど、個人的にはギリアムを彷彿とさせるものがあった。

作品の象徴とも言える敬礼のポーズ、マッチはじめ全くどうでもいいものに執着する人々、先進的なんだか野蛮なんだかよくわからない文明・文化レベル。

プリュクにおける冒険で出会うもの一つ一つがエキセントリックかつ滑稽で、と同時に美術やショットによって本当に別の惑星だと錯覚しちゃうような説得力がもあり、奇妙なバランスの上に成り立ってる作品のようにも思えた。あるいはそれこそが ゲオルギー・ダネリヤのセンスなんだろうか。

そんな異星人に冷ややかな視線を向けながらも徐々に順応していく地球人二人の姿もまた笑えた。

ただ、時に描かれる支配階級による理不尽や抑圧も描かれ、ユーモアだけでなくそこには怒りが込められているようにも感じた。

意外と言ってはなんだけど主人公二人は普通に魅力的だしストーリーも普通に面白くて、2部以降は二転三転していく展開にいつの間にか引き込まれていた。

特にマシコフとゲテヴァンの卑近なキャラクター、徐々に連帯感を示していくマシコフの姿がストーリー的にはポイントだったのかなと思う。