プチ・ニコラ パリがくれた幸せ 感想

  • この作品は二人の原作者ゴシニとサンペのパーソナリティやキャリアを紐解きつつ、そこにクロスオーバーさせる形で『プチ・ニコラ』のエピソードが挿入されるというノンリニアな物語構造をとっている。そこにはゴシニとサンペの生きる現実と『プチ・ニコラ』の世界をつなぐように二人とニコラの対話も描かれていて、個人的には去年見た『アンネ・フランクと旅する日記』が思い出された。『プチ・ニコラ』のエピソードが生み出されていったプロセスにはもちろん脚色もあるだろうけど、作品と作者のあり方というものをとてもよく描いていたんじゃないかと思う。
  • 二人が作品を作り上げていったライブ感を演出するためドローイングが多用されていたところも面白かった。
  • 背景、町並みの描かれ方も印象的で、特にニューヨークが一番印象に残った。
  • ストーリーそのものについて言えば、『プチ・ニコラ』の内容は明るくコミカルではあるのだけどあくまで子供向けであり、そちらよりはもっと二人の生涯や陰翳に焦点を当てたドラマが見たかったとは思ってしまった。そんなオーソドックスな内容ではクリスタル賞は取れなかったんだろうけど。
  • 僕自身は『プチ・ニコラ』はミリしらだったのだけど、この辺の感触というのは原作に触れているか、二人のファンであるかどうかで、全く違うものになるんだと思った。ゴシニとサンペというレンズを通して見ることで作品の解釈はより富んだものになるだろうし、単純にサンペの絵がそのままに動いているというだけで原作ファンとしてはものすごく楽しい体験になるだろうから。