かがみの孤城

  • 14時半起床。8時間寝た。13時頃に目が覚めたのを見るに概日リズムは狂ってないっぽい。
  • かがみの孤城を見てきた。原作の題材やストーリーと原恵一のリアリズムがとてもマッチしたいい作品だった。巧みな心理描写に繊細な芝居が付けられていて冒頭で心を掴まれてしまったけど、ストーリーテリングにも優れていて、城の存在、オオカミさまの正体、他の5人の秘密といった様々な仕掛けや謎に巧みに焦点を当てた先の読めない物語にどんどん引き込まれていった。特に感心したのが6人がどこから来たのかに迫っていく過程でのミスリーディングで、あそこはマサムネ同様僕もパラレルワールドだと推理してしまった。アキと北島先生の容姿であったりリオンの夏期講習に対する反応からそれぞれ違う時代から来たんじゃないかと思わせるシーンもあったのだけど、それをかき消すようにパラレルワールドというフェイクに誘導していくミスリーディングは見事だった。こういう先読みさせない巧さは物語全体に言えたことで、2時間という尺を感じさせない要因の一つはこの点にあった。
    このミスリーディングについては、オオカミさまの「異世界が~」みたいなメタ発言もあったし、アニメ的な文脈でパラレルワールドがド本流でとなってることを逆手に取ったような印象も受けたけど、プロット自体そんなところがあった。というのもアニメの文脈で見ると、一箇所に集められた7人が願いを叶えるために競争するなんてプロットは1話Bパートで犠牲者が出るような血なまぐさいデスゲームに発展しそうなものなのに本作では全くそんな展開は待ち受けていない。闘争心を剥き出しに鍵を探そうとする子は一人もおらず、孤城には来ても来なくても構わない、鍵探しもしようがしまいが自由、鍵を見つけられないペナルティも特になしとルールも激ゆる。対立にしてもかわいげのある軋轢が描かれるくらいで基本的には6人は仲睦まじく、しかし踏み込むことなく交流し続けるに終始する。今風のプロットや設定を持ちながらその実としては競争が起こらないどころか非常に内省的であるというのは特異で、良い意味でアニメっぽくない作品でもあった。
    その内省的なところもまた魅力の作品で、それは心理描写が秀逸であるからにほかならなくて、1年というスパンでこころが現実という「狼」と向き合い、傷を癒やし、前進に至るまでの心の動きをとても丁寧に追いかけていた。まさしく原恵一にふさわしい内容だったと言えるけど、原恵一はこういうビルドゥングスロマンをずっと作り続けてる気もするな。
    他の登場人物もこころ同様丁寧に描かれていて、心打たれる場面はとても多かった。ただ残念だったのが他の5人のバックボーンには最後の最後まで焦点が当たらず群像劇のようなダイナミズムが見られなかった点で、見終わったときにどこか物足りなさを覚えた一因だったようにも思う。例えば終盤に明かされるオオカミさまの正体にあまり驚きを覚えなかったのだけど、これはリオンがこころほど存在感を持たなかったゆえだろう。5人のバックボーンの描写は原作から大きくオミットされたのかとも思ったのだけど、物語構造を考えるとラストより前に語ることは難しいので原作通りなんだろうか。