コミットメント

  • すずめの戸締まりを見た。新海誠作品ではこれまでも日本神話や民話、3.11がモチーフになってきたけど、本作ではその点かなり明示的になっていた。ミミズや要石は大ナマズが原型であろうし、見捨てられた場所から発生する災害やダイジンの気まぐれなありようは日本の神らしい。また「岩戸」という姓や鈴芽が草太を連れ戻しに行くストーリーラインからは『天岩戸』がうかがえる。その他大量にモチーフがあるようだけど、モチーフとしてではなくて3.11そのものを作中に登場させていた点には驚かされた。そこに加えて過疎地や市井の人々の生きる姿にフォーカスしていた点を見るに、本作は新海誠の社会に対するコミットメントの表明となっているんだろう。それに合わせてこれまでの作品で描かれてきた喪失感も個人的なものから社会的なものへと拡張された感があって、未来の自分が過去の自分を後押しする形で母親の喪失を乗り越える結末にはそのまま震災の経験を重ねることができ、未来に対するものすごくポジティブなメッセージが込められていた。デタッチメントからコミットメントへ。まるで村上春樹のような転向を見せた新海誠だけど、個人的にはひたすらに内省的で自己陶酔的だった時代が失われていくようで寂しい気もする。
    そんな感じでモチーフやテーマばかり気にしての鑑賞になってしまったけど、逆に言うとそこまで物語にのめり込めなかったとも言える。面白いロードムービーであったことは間違いなく、ストーリーテラーとしての円熟味を感じさせた一方で、予定調和的な嫌いがあったようにも思える。あと個人的な問題と言うべきか、映画に行きまくってる都合予告をあまりに見すぎたこと(少なくとも15回は見た)で「あ、ここで予告のあのシーン来るのか」という「既視感」の連発が大いに新鮮味を薄れさせてしまった。ただ、予告そのものもちょっとネタバレしすぎていた感はあり、かなり情報制限していた『スラムダンク』をとても新鮮な気持ちで楽しめたのとは対照的だった。予告でどこまで見せるか。プロモーション的には永遠の課題なんだろうけど。あとどうでもいいけど新海誠本パート1欲しかったな……。
  • 本好き15話を見た。神殿に舞台が変わるとこれまでと打って変わって四面楚歌になり、マインが周囲にどんな影響を与えていくのかという期待も手伝って今後がすごく楽しみになる初回だった。つーか神殿長も殺されかけた相手の入殿をよく許したな。
  • かくしごと1話を再視聴。作品自体は面白そうだと思いつつも久米田康治の冷笑的なところがどうも苦手で積んでいた作品。改めて見るとそういうところはありつつも絶望先生とかよりはだいぶ抑え気味だし、そういうシニカルなネタも含めて掛け合いや秘密を軸にしたドタバタ感が純粋に楽しい感じ。
  • 球詠1話を再視聴。ハチナイのイメージと混ざったのか作画ひっどいイメージあったんだけど思ってた以上にちゃんと野球の動きになっていた。カロリー高いスポーツアニメでいかにリソース管理をするか、このすばの菊田幸一をキャラデに起用したのもその辺りなのか。まあこのレベルですら維持していけるのかという不安もあるけど。
    脚本の方でもちゃんと野球を描いていて、きららのノリにうまく融合している。何よりヒロインの屈折を描いてたのが意外で、それがよく描けてもいた。ヨミちゃんと野球するの息苦しいよ……。
  • ネコぱら1話を見た。どういう設定なんだよ。脚本は一つも面白くないけど平野勇一のキャラデと動かし方が正直かなりかわいい。さすが山本靖貴。作画も安定している。
    エロゲアニメなのにOPから主人公がほぼ抹殺されて百合アニメみたいになってるのが今風だなあと思った。
  • ランウェイで笑って8話まで見た。育人の経済的問題をこうも上手く活かしてくるとは。これでもかと言うほど現実を突きつけられた後に救いの手が差し伸べられる。捨てる神あれば拾う神あり。こういう形での緊張と緩和もあるんだなあ