新釈スラムダンク

  • 13時起床。久々に8時間で起きたけど少し眠い。
  • ファーストスラムダンクを見てきた。映画化の話を知った時、映画という媒体で改めて何を描くつもりなのだろうという疑問がまず浮かんだ。シリーズ化してイチから全てを描くのか、完全新作を作るのか。新規層の存在も考慮すると難しそうな映画化だと思ってたんだけど、蓋を開けてみると、おそらく新規層に関してはある程度割り切り、ファンも、そして井上雄彦自身も一番見たかったであろう映像になった山王戦がそこにあった。山王戦はラストにして作品としてのピークで、ストーリーがめちゃくちゃ面白く、見ながらにして確かに映画にするならここしかなかったわと思い知らされることになった。
    実際山王戦のみを映像化しただけでもめちゃくちゃ楽しい映画になっていたと言えるくらいだけど、さすがにそこまで新規層を無視した内容にはなっておらず、宮城を主人公に立て、宮城を中心に湘北メンバーのバックボーンを描いた新規エピソードを挿入しながら試合が進行していく構成になっていた(流川だけ何もなかったけど) このことが作品理解を促し、全くの新規層も、そしてファンも楽しめる仕掛けになっていた。宮城のエピソードは兄の死がもたらした親子のわだかまりをよく描いていて改めて井上雄彦ストーリーテラーとしての能力を感じさせるものではあったけど、正直なところ後半は回想にスイッチしていくのが邪魔臭くてその点は構成的な難を感じた。前半は試合を描きつ回想を描きつという構成も効果的だったんだけど、試合が佳境に入る前のタイミングで一気に回想を描ききってしまうべきだったのかなと思う。
    演出についても期待以上の出来だった。まず何よりセルルックだけれど見事に井上雄彦の絵がアニメーションとして動いていた。セルルックアニメではBEASTERSも相当なクオリティだったけどあれを超えるレベルでなめらかに動いていて、おそらくセルルックとしては最高峰のクオリティだったんじゃないかと思う。トレーラー見た時点でええ感じやんとは思ってたけどまさかここまでのものを出してくるとは。トレーラー公開時に声優交代とセットでCGも批判されてたけど絵にあんだけこだわり持つ井上雄彦がそんな半端なもん出すわけないだろ(後出しジャンケン) まあ正直僕もストバスのシーン見た段階ではそこまでのクオリティにはならないだろうなという予断を持っていたからこのレベルの高さには度肝を抜かれたけど。人物だけでなく背景もハイクオリティだったし、構図やカメラワークも本物の試合を描くことを目指したかのような臨場感あるものになっていて、巧みな音響も手伝ってたぎるものがあった。特にファンとしてはあのシーンが来る……!!みたいな高揚感に何度鳥肌を立てたことか。
    演出の特徴としてはリアリズムを志向していることがはっきりと感じられるものになっていたけど、これがマイナスに作用してる側面もあった。原作ではキャラクターをデフォルメしたギャグシーンが多くあったが、本作では漫的・アニメ的な表現が徹底的に排されていて、唯一桜木と安西のやり取りでそういう表現が見られたことを除けば一切無かったはず。同様に声優の芝居においてもアニメっぽい表現は抑制されていて、おそらくキャストが一新されたのはこうしたディレクションも理由だったのではないかと思う。けれど、それらはもともと漫画的な表現だったからこその良さがあったわけで、リアルに寄ったことで違和感が出てきたり良さが死んでしまったシーンも少なくなかった。あと間の取り方が良かったシーンが多くある一方、「静かにしろい」とかここもっと間取っていいんじゃないのというシーンも散見されたけど、まあこれについてはそれこそ解釈違いなのか。
    これを書いてる現在公開4周目にして既にメガヒットの兆しが出ているそうな。こうなったら当然2作目3作目と作っていくのだろうけどここから更に何を描くのか。それこそイチからリメイクしていくのか、アメリカで飛翔する宮城の物語の続きになるのか。非常に気になるところ。というかキャストロールで桜木の名前が上から4番目に出てきて本当に桜木が主役の映画だったんじゃなかったんだなと不思議な気分になった。