色々と話がとっちらかってる中どう終わらせるんだろうと思ってたけど、アイの物語に決着を付ける形で一応は締めくくられていた。
ねいるの「本当の友達じゃなくても?」というセリフが示すように結局のところ小糸ちゃんは先生に近づくためアイを利用したに過ぎなかった。
だが沢木は小糸ちゃんを拒絶したために自殺した。
アイはそのことを悟った上で小糸ちゃんに感謝を伝えたいと口にし、そこで小糸ちゃんの自殺から始まったアイの物語は決着を見た。
この一連の物語をアイの成長譚として見ると、パラレルワールドのアイがもうひとりのアイに呼びかけられた時に母の声に錯覚するシーンが如実にアイの成長を象徴していたようにも思う。
沢木に裏の顔があったかと言うとたぶん無かったんだろう。
ワンダーエッグの世界の沢木は「自分の中の悪いイメージ」とフリルの思念みたいなものが結合したもの。
怪物の沢木の純粋性に対するこだわりはねいるの夢に現れた若さに固執して自殺した少女とまるっきり同じもので共通して「死への誘惑」をしていた。
きららロドリゲスうんたらかんたらが欲しがっていた「キラキラ」もアイの純粋性のことで、だから殺さないと言ったのだろう(そして実際にアイの体の一部を奪った)。
ではなぜフリルは純粋性にこだわり、純粋のまま死ねと少女たちを唆してきたのか。
おそらくアカと裏アカを奪ったのが大人の女性だったからであり、強い嫉妬に絡め取られたフリル自身もそこで純粋性を失ってしまったからなのではないか。
だからこそ純粋性に憧れ、と同時に大人になろうとしている少女たちの芽を摘んできた。
その上でタナトスたるフリルに対抗できるのはエロスなのかというとやっぱりよくわからない。
エロスの意味は辞書的にしか知らないけど、作品で描かれてきた愛を見る限り性愛がフリルに打ち克つ条件と言われてもどうにもピンとこなくて。
特別編で描かれるのはエロスとタナトスの対立か、あるいはアイの愛がフリルすら包み込むのか。
死者たちが本当に生き返ったのかも気になる。
パラレルワールドが出てきた辺り死ななかった世界線が生まれるだけなのではないかという気もする。
また他のヒロインたちの物語の結末も見てみたかった。
どのヒロインも自らのテーマに決着がついてるとは言えるのだけど、でもやっぱり消化不良感はあって。
特にモモなんかは急ぎ足で片付けられてしまった感は否めない。
とは言えその辺全部描いて1時間というのはとてもありえないので、やっぱり特別編はフリルの物語、ひいては大人と子供の対立がテーマとなるのかな。
大人が生み出した存在が少女たちを自殺に追いやる意味とはなんだったのか。そこは知りたい。
まあただ野島伸司がそこまで信頼できる作家なのかと言うと、このとっちらかりっぷりを見るとよくわからないのだけど。