原作は楽しく読んでたけど例に漏れず商品展開に萎えたクチで、今回久々に作品に触れた。
前半は原作通り、後半は遺された人々を描いたオリジナルストーリーの2部構成。
登場人物たちは決して饒舌にモノを語らない一方で善意に満ちている。淡々としてるけど温かみがある。
そんな静的な感じが作品の魅力だったのだと再認識したけど、それだけに「音」がつくことによる違和感がまず最初にあった。
また原作が4コマで断続的に物語が進行していくためそれを映画のフォーマットに落とし込むことへの苦慮も感じられた。
漫画は1話毎に独立してることでオチの余韻までが味わいでそこに読み手の「間」が存在したのだけど、これが映像としてつながっていくとテンポが速すぎてぶつ切り感のある映像になってしまっていた。
そんなわけで序盤6時のマネをする辺りはクソサムい空気が漂ってて「ヤバい映画を見に来たかもしれない」とまで思ってしまったけど、原作で盛り上がっていく箇所に入っていくにつれて違和感も薄れていった。
絵に関して言えばワニたちを原作の雰囲気のまま自然に動かせていて、その点は結構大きかったんじゃないかとも思う。
作画枚数は少ないんだけどこの作品がヌルヌル動いてもおかしいしちょうどいい按配だったとさえ言えそう。
後半のアフターストーリーについてはさすが映画用に作られたシナリオだけあってそうした違和感は一切無かったし、むしろ全く自然な続編に仕上がっていた。
ワニ亡き後に残された人々の喪失感をよく描いていたし、何よりやっぱりカエルの存在が際立っていて、100ワニっぽさを残しつつ映画の色もよく出せていた。
饒舌で空気の読めないカエルはさっき書いたような作風とは全く相容れないんだけど、最終的にこの異物感溢れる存在が登場人物たちをつないでいく。この構図がまず面白かった。
みんなが悲しみを乗り越えられないでいられる中、空気も読まずにズカズカと立ち入ってくるカエルは誰にとっても、観客にとってさえ不愉快な存在として描かれる。
でもそれが悲しみを乗り越えようとしていたからこその空回りであったことが判明し、ついには彼を原動力として全員が爽やかに喪失を乗り越えていく。
この物語構造にしてもさっぱりとした読後感にしても凄くよく練られた脚本だと思った。
また作品にそぐわないはずが最終的には作品世界に馴染んでちゃんと「100ワニ」になっていたのが不思議なところ。
登場人物たちが何度かカエルの姿にワニを重ねるシーンを見るにワニをモチーフとしたキャラだからなのかもしれない。まあ正直緑色以外に共通点を見出だせなかったけど。
原作と真摯に向き合って作り上げられたからこそこうやって作品世界を壊さずにオリジナル要素を盛り込むことが出来たのだろうし、原作愛を感じるいい映画だった。