囀る鳥は羽ばたかない
近所の映画館で見てきた。
BL映画って事もあって客層は僕以外全員女性で入るのに少し勇気がいった。
まあ若おかみは小学生よりは入りやすかったけど。
R18とは聞いてはいたもの、BLアニメやゲイ映画くらいの感覚で見に行ったら普通にポルノ映画で結構度肝を抜かれてしまった。
のっけから二人の男がまぐわってるんだけど、まず性描写のあり方からしてそれらとは違っていて、普通濡れ場って腰から下で何が起きてるかは仄めかし程度に留まるものだけに思いっきり下半身にフォーカスしてたのが衝撃的だった。
具体的には男がもう一方の男に被さりながら相手の性器をまさぐるというシーンで、下腹部や性器を握る手が克明に描かれていた。
その後も性器を口に含んでいるところまで分かるフェラチオ、尻に打ちつける様がありありと描かれたアナルファックと踏み込めるところまで踏み込み、しかも濡れ場に次ぐ濡れ場ということもあって、異世界にでも迷い込んだんじゃないかという圧倒感と困惑に満たされていた。
本当にセックスしたら物語が進んでまたセックスして物語が進んでって感じで、アダルトアニメ並といっても過言じゃないくらいセックスシーンに尺が割かれていた。
こんな映画は今まで見た事がなかったし、そもそも男同士のリアルなセックスって動画はおろか創作ですら見た事が無かったので、目の前に映るものがカルチャーショックの塊でしかなかった。
いや男同士の実際のセックスがどういうもんかは知らないんだけども。
かように性描写に目が行ってしまうところはあったけど、同時に単なるポルノ映画というわけでもなかった。
登場人物の心の動きやバックグラウンドが丁寧に描かれていた事で人間ドラマとしてはなかなかリアリティがあったし、アウトローを描いた作品らしくスリリングな展開や暴力性によって全編にわたってピリピリとした緊張感があって、ストーリーとしてはなかなか面白かった。
リアリティという意味では登場人物が女性に性的な関心を示す姿を描いていたのが印象的だった。
今まで見てきたBLや百合、あるいはそれを匂わせるほぼ全ての作品が、メインキャラは異性への性的な関心を全く示さないか、あるいは示してもプラトニックなものにとどまるものだった。
そういうものなのだからそれでいいと思う一方、それゆえにBL百合はファンタジーに過ぎないという点においてLGBT作品と決定的に分かたれているともみなしてきた。
本作では間接的とは言え百目鬼の回想を通じて女性との絡みまでもが描かれていた事で、BL映画ながらLGBT映画の境界線にかなり接近しているように感じられた。
とは言え矢代が登場するほとんどの男と関係を持ってしまうあたりはやっぱりBLなのだけど。
気になった点としては物語としての完成度が挙げられる。
なにかテーマを持って描かれたというよりは、単に原作のエピソードを再構成した、悪く言えばツギハギ的で出来るだけ多くのキャラを出す事に重きが置かれた脚本に見えた。
ただ改めて女性がBLに抱く性倒錯がよく理解できないことを感じたし、その文脈が理解できない以上、そもそも作品理解自体が困難なところは大いにあるのかなあとも思う。
GREAT PRETENDER #8 Case 2_3: Singapore Sky