世界征服〜謀略のズヴィズダー〜 #2「食卓から墓場まで」

予想を超えたコミカルさ

サブタイやモザイク処理された料理の予告カットなんかからはある程度そうなることは推察できていた。
それでも1話と比べてもうちょっとコミカルに寄せるくらいなんだろうと思ってたら、その実はほとんどギャグ回だった。
ギャグはやらないんじゃなかったのか!と早くも裏切られた感があるが、そこはまあ純粋なギャグアニメではないよくらいの意味だったのかもしれない。

脚本・演出の相乗効果

肝心の内容はどうだったのかというと、面白かった。しかも前回以上に。
第1話ではコメディやギャグとして見られるのを良しとしないためにコミカルさを抑えていたのか、この第2話では我慢を爆発させてきたかの如く、脚本演出双方が高いユーモアセンスを披露していた。
今回は第1話の翌日の話で、明日汰がなし崩し的にズヴィズダーへと加入するところまでが描かれている。
その過程をコミカルに描いた1話なのだが、と同時に主要登場人物、及び少しだけ設定が掘り下げられる形になっていた。
見所としては、サブタイにもあるように料理、もといメシマズにあるが、全体的にクオリティが高い。
個性的なキャラクターや全然秘密結社っぽくない点など様々なギャップが笑いを生み出していたが、脚本に特に感じた点は二つ。
ひとつは言葉選びの秀逸さで、例えば冒頭のおでんそばであったり洗剤とめんつゆの取り違えであったり、常にこちらの斜め上の発想を行く、独特なセンス。
もう一つが話の構成で、例えば明日汰の名前のいじり方であったり、めんつゆを予告のオチに持ってきたりといったネタの引っ張り方だ。
一つのネタを引っ張った笑いというのは往々にして繰り返されるほどに面白みが薄れていく、くどくなりがちな手法と言えるのだけど、本作ではむしろくどいどころか適所に効果的に挿入されていて、そこに特にユーモアセンスを感じる。
ちなみに明日汰の名前については逸花だけ本気で間違えてたというのもまた笑える。

前回に引き続き自ら絵コンテを担当した岡村天斎(演出はヤマトナオミチ)もセンス溢れる演出で呼応していた。
MVPはもちろん逸花の料理ということで異存はないだろう。


そこにとどまらず、間のとり方、キャラや表情の崩し方、台詞回しなどでうまくツボを抑えていた。前半逸花に追いかけられるシーンの表現も秀逸だった。
これらの結果として良質なコメディへと仕上がり、各キャラクターの特徴と魅力も存分に表現できていたと言える。萌え的な方向でも。
ちなみに岡村天斎については調べたところ、なんと3話の絵コンテも自ら切ったようだ。
同じ人間がここまで連続で絵コンテを切るのはテレビアニメ的にも、彼としても珍しく、それほどにこの作品に入れ込んでいるということなのかもしれない。

「居場所」

コメディに隠れがちではあったが、別に話のテーマも用意されていた。
とはいっても改めて通して見たら単に深読みしすぎだったかもという気もしてきたので、軽く読んでほしい。
前回明日汰は、征服後に自分の居場所を案じるケイトに激しく苛立った。
居場所なんてそんなの天下の回り物だ、替わりのやつなんていくらだっているのだと。
苛立ちやこんな言葉が出てくるのは自分の居場所を見出だせないからと考えるのが自然で、それは家族との関係からも見て取れる。
更に明日汰には友人もいないのではないかと思わせるフシもある。
今回学校に行く場面が出てきたが、友人らしき人物が一人も登場しなかった。
学校パートはほとんど描かれなかったからわからないとも言えるが、家出して食うものに困っている程なのに友人を頼らないというのは不自然ではないだろうか。
唯一蓮華はそれに近い関係と言えそうだが、クラスメイト以上の関係でないことは一目瞭然だ。
そんな彼の元に星宮ケイトが現れ、今回ズヴィズダーのアジトへと訪れることになる。
初めは引き込まれることを拒否していたもの、居心地の良さを覚えたのか徐々にどことなく惹かれていく。
ホワイトロビンとの遭遇にズヴィズダーの危機を察知し、助け舟を出したシーンがその象徴といえるだろう。

この居心地の良さというのはズヴィズダーに家族の温もりを感じたということなのかもしれない。
実際に、全員で食事を取る、逸花が戻った時にただいまという言葉を発した点、またその言い方、背景の掛け軸の内容、ケイト自身が家族と明言するなどからいくつもの部分から家族っぽさというのは強調されていた。

更に終盤、彼女たちに特技の料理を振る舞うことになるのだが、それが絶賛されて、明日汰はとても満足気な表情を浮かべる。

居場所のなかった人間が特技によって認められるというのは、強く必要とされている気持ちになるだろうし、自分自身に価値を感じることが出来る。
それは今までの明日汰には味わえなかった感情で、今回のストーリーは明日汰が居場所を手に入れるまでを描いた話だとも言える。
サブタイトルの「ゆりかごから墓場」までをもじった「食卓から墓場まで」というのはつまり、明日汰はこの先最後までズヴィズダーと共にすることを暗示しているのかもしれない。
また、これは前回の明日汰の怒りへのアンサーともなっているのだろう。
そして2話について考えてから気づいたが、居場所に対する疑問には1話の終盤でまたケイトも答えていた。
自分の立っているこの場所が私の居場所だと。
更にそれが征服の第一歩だとも言っており、「居場所」というのは征服に対する重大なキーワードになっているのかもしれない。
実際に2話でも居場所をテーマにした話作りがされているわけだし、ズヴィズダーの他のメンバーについてもなぜ赤の他人が家族ごっこのようなことをしているのか考えてみると、居場所の無い、あるいは無くした者たちがケイトの元に集ってきたとも推し量れる。
居場所を一人ひとりに与えることが征服なのだろうか。だとしても具体的にどうやって?
ここからはほとんど与太話なのだが、これこそが「謀略」なのではないだろうか。
ケイトはなぜか出会った段階で明日汰が家出だと知っていた。
そして居場所を持てないことまで仮に知っていたとしたら、今回彼に居場所を持てるよう仕向けたとも考えられなくはない。
そんな形で一人ひとりに居場所を与えて征服に巻き込んでいくというわけだ。
ただこの推測には、居場所を与えることがなぜ征服になるのかという根本的な疑問には答えられていないのだが。
それでも次回3話も居場所がテーマになっているのかどうかで、明確になってくる部分は広がりそうだ。

広がる期待感

以上、第2話を振り返ってきてみた。
今回は本当に頭から尻尾までコメディに終始した感じで、何も征服してないし(晩飯はしたけど)、ほとんど話も展開していない。
2話の時点でこのノリで来た上、予告やなんやから3話もコメディっぽい感じがあり、最後までこういう方向性で進むんだろうかとも思ったが、そうなると1話のシリアスパートはなんだったんだということにもなり、どこかしらでシフトしてくることが予想される。
ただ、相変わらずコンセプトもテーマも見えてこないので、どこでどの程度どんな風にというのは予測がつかない。
逆にその予測のつかなさと今回保証されたクオリティが、今後の展開への期待感を目一杯煽ってもいるのだが。
前回1話完結は引きが作りにくいという弱みを持つと書いたが、物語の方向性や終着点を読みにくくさせるというのは1話完結の強みなのだと思えた。
個人的なことを言えば、そろそろアクションシーンが見たいが。


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