ジュゼップ 戦場の画家

見終わってから伝記映画だったと知った。

フィクションだと思ってただけに全然テーマが理解できなくて最初に出てきた感想が「なんだったのだろうこれ」だった。

ただノンフィクションだと分かってたら作品を読み解けていたかというと、受け取り方が変わったくらいで作品を読み解けることは無かったと思う。

スペイン内戦、フランスによる強制収容、そしてジュゼップ・バルトリと作品理解には多くの背景知識が必要で、僕はそのどれについても全く知らなかった。

朝日新聞論座に叶精二による監督インタビューが掲載されているのだけど、冒頭のシーンについてこうある。

──「ワルシャワ労働歌」を口ずさみながら国境をめざす3人は、アナーキストのエリオス、負傷したフランス人義勇兵マルタン、そして共和主義者の画家ジュゼップという、立場の異なる男たちでした。彼らの言動を通じて、スペイン内戦が抱えていた矛盾、見殺しにしたフランス政府の対応など、複雑な事情が短時間で端的明瞭に語られています。実に濃密なプロローグだと思いました。

オーレル 全くその通りです。スペイン内戦の歴史を冒頭の数分で効率よく比喩的に語るにはどうすべきか、とても考えました。プロローグで長々と語ったりせず、暗くなったりもせずに、反フランコの3人の在り方を示そうと思いました。

 最初は歌だけが流れる黒バックの静止画面です。その後に隠喩的な三つのシーンを挿入しました。一つ目は狼です。狼に対して3人が銃を撃つのですが、全ての弾が外れて飛んでいく。つまり、彼らがフランコに敗北したことを示しているわけです。二つ目が国境に向かって進むシーン。三つ目がフランスの強制収容所にたどり着くシーンです。

webronza.asahi.com

これを読んで膝を打つような思いがしたのだけど、と同時に記号が全く読み解けてなくて自分は74分間一体何を見ていたのかと乾いた笑いが出てくる。

唯一理解できたとすれば強制収容というテーマが現代性を持っていることくらいだろう。あとはフランス映画らしい官能性。

ちなみにこのインタビュー非常に濃い内容なので、作品のちゃんとした感想を探してる人はこんなサイトなんか眺めてないでこっちを読もう。

単純に話として面白かったかというと、ストーリーラインは分かりやすいし、劣悪な環境や虐待がリアルに描かれていて強制収容を描いた映画としてよく出来ていた。

ただ個人的には同じジャンルの映画を最近よく見ているためあまり新鮮味はなかったし、もっと凄絶な作品もあったのでそこまで印象深いものでもなかった。

演出的には過去の曖昧な記憶を描いたシーンではストップモーションのようにフレーム数を落とすって手法が面白いと感じた。