ロッキー5/最後のドラマ

ロッキー5、4よりつまらないと聞いていただけに、そんなん90分でも辛いわと思ってごはん食べながらテキトーに流し見るつもりだったんだけど、普通に面白くて最後まで一気に見てしまった。

1作目は間違いなく名作なのだけど、2以降は1作目の流れをただ踏襲し続けているに過ぎなくて、しかもシリーズを重ねるごとにその傾向が強くなってきていたこともあって、正直かなりウンザリしていた。

で、今回も、一文無しになっちゃったけどパンチドランカー乗り越えて栄光を取り戻しました的なまた「お約束」の流れになるんだろうなと思ってたら、なんとロッキーがトレーナーに転身。
いつもとは一味違う展開になったところに家族の存在を有機的に絡めたりしていて、2以降にあった間延び感というのは全く感じられなかった。
ラストもリングに立たずにストリートファイトで終わるっていうのも意外性があって嫌いじゃなかった。

ただ、とは言っても、世間的にはこの作品の酷評の理由がむしろそこで、結局ファンが求めているのはその「お約束」なのだ。
つまり新たなる強敵が出現して、困難に見舞われて、必死でトレーニングして(男臭くて超前近代的な)、リングに立って物凄い打ち合いの末に勝利するという。
個人的にはそうしたセオリーを破ったことが良かったのだともちろん思うけど、その一方で復活まで描かなかったことには物足りなさは覚えた。
マンネリも批判されていたようだし、多分これまでと違うロッキーを志向していた故こうなったのだろうけど、ちょっとそこにこだわり過ぎて、捨てるべきところと残すべきところが見えなくなってしまったのかもしれない。

これまでのロッキーであればトレーナーにやりがいを感じる一方でリングで燦然と輝くトミー・ガンに歯痒さや燻り続ける想いというのはあったはずで、観てる者誰もがここからロッキーの復活劇があるはずだと確信していたはずだ。
例えばトミー・ガンをわざわざヒールに仕立てるより憧れのロッキーに育てられた末に師匠となった憧れのロッキーに挑戦するなんていう少年漫画の逆バージョンみたいなプロットなら間違いなく熱い展開になっていたように思う。
それがストリートファイトで終わってしまうと、憎き敵を二人ぶっ倒したとはいえ、どうしてもその辺りのカタルシスが解消しきれず中途半端という印象になり、結果酷評につながったのは致し方ないことだったかもしれない。

また、一文無しになったり舞台が1作目と同じ所に戻ったりということを考えると原点回帰を志向していたことも感じられたけど、そうであれば尚更残すべきところは残してほしかったところ。

と色々書いてきたけども、何よりも2以降の間延び感にげんなりしてきた僕としてはそこが解消されていたという事実だけでも、1作目に次いで楽しめたのは間違いない。多くの人には異議を唱えられそうだけども。

ちなみに少年漫画的な要素というものを1作目見た時に特に感じたんだけど、この5の詰めの甘さを見ると改めてそういうのは少年漫画のお家芸だなあと思った。
受け手の喜ばせ方を熟知しているというかよく計算しているというか。