鶏の墳丘

・たまたまイメージフォーラムで上映されることを知った。キービジュを見た感じファンシーな作品なのかなというノリで乗り込んでいったのだけどまあ地獄だった。

・物語性が全く希薄で、展開に連続性も無ければ明確な意味も持たない。というか物語展開というものが無い。理解不能な映像と不快なサウンドがひたすら流れ続けるだけで、ショートアニメならまだしこれがも90分弱続き、意味の無いものを座視し続けるのは拷問でしかなかった。開始10分か15分くらいで一人退出した人がいたのだけど正直僕もそれに続きたかった。

・幸いだったのが上映後に解説がありそこで色々腑に落ちはした。というか先に簡単な解説をしてから上映するって構成にしてほしかった。まあ元々文脈を理解してる人達に向けた上映だったんだろうけど。解説は田中大裕、谷口暁彦

・監督はシーチェンという中国のファインアート出身の作家。CG制作は5年ほど前から、作品の出品は2,3年前から始めたらしい。本作以前にパーソナルな短編も制作している。その一部が本作にも流用されていて、ゆえに本作はシーチェンの自伝的な要素もあり、物語的に不連続であるのは記憶の断片をつなぎ合わせたような構造としたからなんだろう。つまりはカットアップなのだけど解説ではそうした構造をモジュール的と表現していた。

・登場人物がキャラクター性を持たないこともまた物語性希薄さの要因であったけど、それは匿名性を表現していたためで作中で描かれるスマホで撮影された戦争や日常はまさにそうしたもの。

・音響についてはこれは空間性、残響が出るように音を加工していない。無加工の理由はなんとなく推し量れるけど耳が痛かった。

・中国では検閲を通らなかったらしい。まあ確かに共産党批判を彷彿とさせるシーンはあったけどDAHUFAがいけるならこっちもいけそうな気がしたけどこういうわけの分からんアートアニメは通りにくいとかあるのかな。ちなみにシーチェン自身は受け手に理解されなくてもかまわないとか。